Opus 1123

過去と現在をつなぐ付箋

  • エッセイ

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本を読むとき、いつもかたわらに付箋を用意しています。お気に入りはフィルムタイプの付箋。半透明で文字を隠さないのがいいし、強度があって長持ちする。読書のなかで、「この表現いいなぁ」とか「これは大事!」と思ったときにすぐにマークする。こんな読み方が約2年ほど続いているらしい。(2年前に読んだ本にも付箋が付いているから)

一時期本に直接書き込みをする読み方をしてみたけれど、あまりなじまなかった。書くのがめんどくさくなったんじゃなくて、ページの限られたスペースを見ると、なぜか一気に書く気を失くしてしまうからだ。やっぱり文字を書くなら最低でも A5 くらいのスペースはほしい。だから今は、読書のあいだは付箋で目印を付けておいて、あとからノートにいろいろ書くようにしている。

新刊や読んだことのない本よりも、過去に読んだ本を読み返すことが多くなった。わたしは年に1度くらい蔵書の整理をして、もう読まないと思った本は思い切って売ってしまう。この検閲を突破して今でも手元に残っている本は、わたしにとって思い入れの深い本たちということになる。なるほど、やはり読み返してみても、改めて考えさせられたり、新たな発見があったり、刺激になることが多い。

その生き残りたちの多くにももちろん付箋が付けてあるのだけれど、その付けられた箇所を見るとおもしろい発見がある。「あぁ、そうそう、このメッセージに感動したんだった」と思うところと同じくらい「なぜここに付箋が?」と思うところがある。ときどき昨日の自分が他人のように思えることはあるけれど、1年前、2年前の自分はまったく赤の他人だ。最近読んだなかだと、『ドイツのスポーツ・バーではサッカーの試合とアダルトな映像が交互に映し出される。サッカーの試合のあいだは騒いでいた観客もアダルトな映像になるとウソのように静まりかえり、試合がはじまるとまた騒ぎ出す。』こんな内容のところに付箋が貼ってあった。おそらくおもしろいと思って貼ったんだろうけど、今読み返してもどこがおもしろかったのかわからない。ちょっとタイムマシンに乗って当時の自分に質問してみたくなる。

読書だけに限っても、自分の足跡が追えるのは楽しいことですね。意味不明なことが書いてあってもそれが当時の自分なんだし、そのころの自分があるから今の自分があると感じられる。本当にいい本に出会うと、読み返すたび、「うんうん、当時はこれを座右の銘にしてたけど、いまでは当たり前にできるようになってるな」とか「次はこれを目標にしよう」といった、ステップ・バイ・ステップで成長を実感できたりする。

しょうもないと思った記録も、過去と現在をつなげてみると大切なステップだったと思うときがありますよね。

    最後まで読んでいただき ありがとうございました。

    何か一言添えてシェアしていただけると幸いです。

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